WV-S65340-Z4
ネットワークカメラ
設定手順書
おそらく Panasonic（旧：パナソニックシステムネットワークス）の業務用ネットワークカメラの型番です。
想定される「設定手順書」の内実（概要）
管理者向け：ストリーム方式の選定と設計指針
0) 前提と用語（超要約）
RTSP：制御用プロトコル（URLで接続・再生を指示）。通常はTCP 554。
RTP/RTCP：映像/音声の実データ転送（RTP）と品質情報（RTCP）。UDP/TCP 両方あり。
GOP/IDR間隔：キーフレームの間隔（例：2秒）。録画の早戻しや再同期に重要。
プロファイル/ストリーム：同一カメラから解像度やコーデック違いの複数配信（例：Stream1=4K/H.265、Stream2=1080p/H.264、Stream3=MJPEG 640×360）。
1) ストリーム設計（何本出すか／何に使うか）
典型パターン：
Stream 1（主）：録画用／大画面監視
例）H.265、4K、CBR 6–8 Mbps、GOP 2s、30fps
Stream 2（副）：ライブモニタ多数／帯域節約
例）H.264、1080p、CBR 2–3 Mbps、GOP 1–2s、15–30fps
Stream 3（軽）：モバイル／サムネ表示／互換用
例）MJPEG 640×360 or H.264 480p 0.5–1 Mbps
ルール：録画は高品質（Stream1）、多数視聴は軽め（Stream2/3） に割り振ると安定します。
2) ユニキャスト（1視聴者＝1セッション）
方式
RTP over UDP（RTSPでネゴシエート）
低遅延。パケットロスに弱い。カメラ↔視聴者で個別のUDPポートを使う。
RTP over TCP（RTSP interleaved）
多少遅延↑だがNAT/ファイアウォール越えが容易。TCP 554で多くが流れる。
HTTP(S) MJPEG
互換性が高い（ブラウザで表示しやすい）が帯域消費が大きい。
いつ向いてる？
ネット越し（NAT/VPN/拠点間）：TCPユニキャストが最も安定。
同時視聴が少数（～5–10人程度）：ユニキャストで十分。
認証をユーザー単位で掛けたい：ユニキャスト（ID/パスワード）が簡単。
帯域の考え方（例）
1セッションあたり 4 Mbps の映像を 10人が視聴する場合
カメラ送信合計 ≈ 4 Mbps × 10 = 40 Mbps（+ヘッダ等で少し増加）
→ 視聴者が増えるほど線形に増えるのがユニキャスト。
ファイアウォール例（Linux/iptables の一例）
実機のRTPポートレンジは機種設定に依存。可能なら固定レンジに縛るのが望ましい。
# RTSP 制御
-A INPUT -p tcp --dport 554 -j ACCEPT
# RTP/RTCP（例：UDP 50000–50019 をカメラ側で設定した場合）
-A INPUT -p udp --dport 50000:50019 -j ACCEPT
RTP over TCP を使えば UDP の穴開けは不要（TCP 554 のみ）で運用が楽。
3) マルチキャスト（1配信＝多者で共有）
方式
RTP/UDP マルチキャスト（例：239.255.0.10:5004）
カメラが1本だけマルチキャストを投げ、視聴者はIGMPで参加。
ネットワーク要件（ここがキモ）
IGMP Snooping（L2スイッチ）：加入ホストのポートだけにマルチキャストを流す。
IGMP Querier（L3 or L2）：同一VLAN内にルータが無いならスイッチのQuerier機能必須。無いと全ポートに洪水（フラッディング）。
VLAN設計：監視端末が多いフロアは同一VLANにまとめるとシンプル。
ルータ越えに流したい場合は PIM/igmpproxy 等が必要（運用難易度↑）。
アドレス設計
239.0.0.0/8（管理ドメイン内のプライベート）
現場では衝突回避のため 239.255.x.y/16 をよく使います（サイトローカル感覚）。
例）239.255.10.40:5004（カメラAのStream2用）
239.255.10.41:5004（カメラB…）
→ 機器台数×ストリーム数だけ一意に割り当て。
いつ向いてる？
多数同時視聴（監視室のビデオウォール、多拠点での一斉視聴）
帯域節約が最優先のLAN内配信
帯域の考え方（例）
1配信 4 Mbps を 25人が視聴：
ユニキャスト：4 Mbps × 25 = 100 Mbps（+α）
マルチキャスト：カメラ→スイッチ ≈ 4 Mbps（+IGMP/RTCPの微小分）
→ L2内の総トラフィックは視聴者数に応じて分散されるが、カメラの負荷は常に1本分。
（計算のしかた：
1視聴の映像帯域＝4 Mbps。
ユニキャストは視聴者分だけ複製＝4×25=100 Mbps。
マルチキャストは配信1本＝約4 Mbpsのみ。）
セキュリティ考慮
マルチキャストはクライアント個別認証が苦手。
→ 監視VLANを分離し、視聴端末だけIGMP参加を許可（ポートACL/802.1X/端末認証）
→ 重要映像は**ユニキャスト（認証あり）**で録画・持ち出し制御。
スイッチ側チェックリスト
VLAN X で IGMP Snooping 有効
同一VLANに IGMP Querier（L3が無ければL2スイッチのQuerier）
不明マルチキャストはブロック（フラッディング防止の既定が望ましい）
uplink/監視室ポートは IGMPレポート/クエリ通過を確認
ルータを跨ぐ場合のみ PIM/SSM/ASM 等を検討（現場は同一VLAN内で完結が無難）
接続テスト（VLC例）
受信側（視聴端末）で：
udp://@239.255.10.40:5004
カメラ側：管理画面で マルチキャストアドレス/ポートを設定し、Stream2などを割り当て。
4) 使い分け早見表
目的/条件 推奨方式 理由
録画（確実性） ユニキャスト（RTP over TCP も可） 認証・再送で安定、NVR互換性が高い
多数同時視聴（監視室） マルチキャスト カメラ負荷・帯域を最小化
拠点外／NAT越え ユニキャスト（RTP over TCP） 554/TCP だけで通す構成が楽
ブラウザ軽表示 MJPEG（HTTP(S)） 互換性最強（帯域は重い）
低遅延重視 RTP over UDP 安定したLAN内で効果的
5) 品質・遅延チューニング指針
コーデック：H.265は帯域効率◎／CPU負荷↑、H.264は互換◎
CBR vs VBR：録画向けはCBR（帯域予測が容易）、監視向けはVBR/上限付きも可
GOP/IDR：1–2秒を目安（NVR再同期やシークが安定）
Bフレーム：遅延に影響。低遅延用途はBフレーム最小 or 無効
フレームレート：ライブ多数は 15–20fps 程度でも実用十分（帯域削減）
VBR上限：「解像度×fps×シーン」を踏まえ、上限（ceiling）を設定し輻輳回避
6) URLとツール例（管理者の実務用）
実URL形式は機種/ファームで異なるため、具体名は例示。機器のRTSPガイドを確認してください。
RTSP（ユニキャスト）
php-template
rtsp://<user>:<pass>@<camera-ip>/MediaInput/stream?profile=1
VLC（ユニキャスト/TCP 強制）
perl
vlc --rtsp-tcp "rtsp://user:pass@192.168.1.50/MediaInput/stream?profile=1"
ffmpeg（録画テスト）
go
ffmpeg -rtsp_transport tcp -i "rtsp://user:pass@192.168.1.50/MediaInput/stream?profile=1" -c copy -t 00:05:00 test.mp4
Wiresharkフィルタ
nginx
rtsp || rtp || igmp
7) 最小構成・導入チェック（マルチキャスト）
csharp
[Camera(Stream2 1080p 2Mbps)]
│ 239.255.10.40:5004/UDP
▼
[Switch VLAN10]
IGMP Snooping=ON
IGMP Querier=ON (VLAN10に設定)
│
┌─────┴──────────┬──────────┐
│ │ │
[Monitor A] [Monitor B] [NVR/Decoder]
(IGMP join) (IGMP join) (IGMP join)
カメラ：Stream2 を 239.255.10.40:5004 に設定
スイッチ：VLAN10 で IGMP Snooping/Querier 有効化
端末：VLCで udp://@239.255.10.40:5004 再生 → 映ればOK
8) トラブル対処の勘所
マルチキャストが全ポートに洪水：IGMP Snooping/Querier 未設定
映像が途切れる（UDP）：ネットワーク負荷/ロス → 一旦 RTSP over TCP で切り分け
録画抜け/サムネ黒：GOP/IDR間隔が長すぎる／NVR側のキーフレーム要求に合ってない
遅延が大きい：Bフレーム削減、バッファ縮小、TCP→UDP化（LAN内限定）
拠点間のマルチキャスト不可：ルータ越え設定（PIM/SSM）不足。原則、同一VLANで完結を推奨
認証要件：マルチキャストはVLAN/ACLで制御。外部持ち出しはユニキャスト＋認証で。
9) 推奨の運用ひな形
録画：Stream1（高品質、ユニキャスト、RTSP over TCP）
監視室ライブ：Stream2（中品質、マルチキャスト）
モバイル/事務端末：Stream3（軽量、ユニキャスト or MJPEG）
ネットワーク：監視VLANを分離、IGMP Snooping/QuerierをVLAN単位で有効化
ポリシー：録画系は認証必須＆ログ保存、マルチキャストはVLANで視聴端末限定
必要なら、あなたのスイッチ銘柄（例：Allied/Cisco/Netgear/HPE）に合わせて、
「IGMP Snooping/Querier の具体的な設定コマンド」まで落とし込みます。
ここまでで「カメラのストリーム設計・ユニキャスト・マルチキャスト」を整理しましたので、
次に ネットワークカメラ（WV-S65340-Z4）とレコーダ（NVR/DVR/VMS）との関連性 を管理者向けに解説します。
📑 ネットワークカメラとレコーダの関連性（管理者向け）
1. レコーダの基本的な役割
録画（Recording）
カメラから送られてくる映像ストリームを保存（HDD/RAID/NAS）。
再生（Playback）
保存した映像を検索・再生（日時指定、イベント検索）。
ライブビュー（Live View）
カメラ映像をリアルタイムに表示。多数同時でもNVRが中継して負荷分散可能。
管理（Management）
ユーザー認証、ログ保存、アラーム・イベント連動。
2. カメラとレコーダの接続方式
① ユニキャスト接続（標準）
NVRがカメラごとにユニキャストセッションを張り、映像を取得・録画。
認証（ユーザー名/パスワード）が可能で、セキュリティ重視に向く。
NVRとカメラの台数が増えるほど、カメラの送信セッション数も増加。
→ 同一カメラを複数NVRで録画すると カメラ帯域・負荷が倍増。
② マルチキャスト接続（録画室の工夫）
カメラが1本だけマルチキャスト配信 → NVRや監視端末が同じストリームを共有受信。
カメラ側の負荷が一定で、大規模監視室に向く。
ただし、レコーダがマルチキャスト対応している必要あり。
（Panasonic WJ-NX シリーズなどは「マルチキャスト録画」モードあり）
3. ストリーム設計とレコーダの使い分け
実務上のおすすめ割り振り
Stream1（高画質／高ビットレート） → レコーダ録画用
H.265/H.264、4K/1080p、30fps、CBR
常時録画・イベント録画で使う
Stream2（中画質／中ビットレート） → ライブビュー用（NVR経由 or マルチキャスト）
監視室の壁面モニタなど
NVRが中継して多拠点へ配布
Stream3（低画質／低ビットレート） → モバイル/遠隔監視用
事務PCやスマホアプリ向け
帯域節約＋遅延を抑える設定
4. レコーダとの関連で重要なポイント
(1) 認証とセキュリティ
NVRはカメラにログインするため、カメラ側で録画用ユーザーを作成するのが安全。
（例：録画専用ユーザー recorder01 / 読み取り専用権限）
管理者用アカウント（sysadmin）は極力NVRには使わない。
(2) 帯域設計
録画用ストリームは NVR台数分のユニキャスト負荷がかかる。
マルチキャスト録画を使えば、カメラ1本の配信で複数NVRが受信可能。
NVR自体も同時再生・ライブ転送で帯域を消費するため、カメラ側・NVR側双方の設計が必要。
(3) イベント連動
カメラが動体検知 → NVRにイベント通知 → アラーム録画やアラート出力。
この場合、RTSP制御＋イベント通知プロトコル（PanasonicならHTTP通知／ONVIFイベント） が使われる。
(4) 録画モード
常時録画（24時間）：基本的にStream1を利用。
イベント録画（動体検知／アラーム入力）：ストレージ節約。
スケジュール録画：昼は常時録画、夜間はイベント録画、などの切替も可能。
5. 典型的な関連イメージ図（テキスト模式）
css
コードをコピーする
┌───────────────┐
│ WV-S65340-Z4 │
│ (Stream1/2/3) │
└─────┬─────┬─────┘
│ │
[ユニキャスト] [マルチキャスト]
│ │
┌────────────┐ ┌────────────┐
│ NVR（録画） │ │ 監視PC/モニタ │
│ Stream1 │ │ Stream2 │
└────────────┘ └────────────┘
│
HDD/RAID 保存
6. 要点まとめ
録画用はユニキャストが基本（認証＋確実な録画）。
監視室の多画面表示はマルチキャストが有効（帯域効率化）。
NVRは「録画」「ライブ配信の中継」「認証ゲート」として機能する。
カメラ側ではストリーム設計を録画とライブで分けるのが安定運用の鍵。
